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振り向けば…
第38章 なんか変…
「父が癌で5回も手術をした人でしたから。」
私にも苦労があったのだと岩谷さんに説明をする。
「癌…、ですか…。」
岩谷さんが目を見開く。
「最初の手術は今の唯ちゃんよりも、もう少し大きくなったばかりの頃でした。悠真とはその頃からの付き合いです。」
「そんなに昔から…。」
「幸い、うちのお父さんは癌に勝ちました。」
「強い人なんですね。」
「強くて面白くて私には優しい自慢の父です。」
「僕もそうありたいです。」
何故か悠真とお絵かきを始めた少女達の中で唯ちゃんを見つめて岩谷さんが言う。
お絵かきに夢中の子供達にジュースを持って行く。
「来夢…。」
助けてくれと悠真が情けない顔を私に向ける。
感情はなくとも子供好きの悠真の優しさは子供達に伝わるから悠真は少女達にモテモテだ。
「唯ちゃんは何を書いてるの?」
「結婚式!唯とお兄ちゃんの。」
少女の妄想が白い紙いっぱいに広がっていく。
「諦めろ。悠真…。」
クスクス笑って悠真を突き放す。
「唯ちゃん、お兄ちゃんと結婚するの!?」
「お兄ちゃん、お仕事は何してるの?」
「経済的に大丈夫な人なの?」
最近の5歳児は一体どこで、そんな知識を仕入れてるのかと聞きたくなるような質問が悠真を攻撃する。
「あー…、お兄ちゃんはさ。とにかく結婚とかに向いてない男なんだ。だから、あのお姉ちゃんにもいつも振られてるんだ。」
アタフタとしながら悠真が変な説明をする。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんが好きなの?」
「お姉ちゃん、なんでお兄ちゃんと結婚してあげないの?」
「お姉ちゃんは他に好きな人が居るの?」
悠真への質問攻撃が何故か私を襲って来る。