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振り向けば…
第39章 長いな…
疑いの目で悠真を見る私の頭を悠真が撫でて来る。
「俺が好きなんやろ?」
悠真の確認。
恋人の気持ちを私に持ってないくせに私の気持ちを優先する悠真…。
「悠真に好かれたい。」
「充分、好きやぞ。」
「でも…。」
「嫌いやったら20年も一緒に居らん。」
「彼氏として?」
そこで悠真の言葉が止まる。
恋人じゃない私の彼氏…。
日本語が変?
なら、なんて説明をすればいい?
悲しくなる私の顔を撫でて来る。
「京都に行くんやろ。」
「うん…。」
朝ご飯を食べてから今日は車で京都に向かう。
季節はもう11月。
紅葉のシーズン…。
市内に入り、まずは東福寺に車を向ける。
京都の紅葉を楽しむには間違いなく東福寺は外せないと言われてる。
そして、その東福寺でも雲龍図の1つが拝観出来る。
車を停めて東福寺の入り口に向かう途中の事だった。
「ねぇ…、まさか、あれって桜?」
この週は異常なくらいに暖かった。
「狂い咲きって奴やな。」
とても珍しいものを見れた。
桜と紅葉のコラボレーション。
お目当ての東福寺に入り、お寺の通路である橋から見える紅葉を眺める。
「あの桜…、来年の春にはちゃんと咲くのかな?」
笑いながら悠真に聞いてみる。
「無理ちゃうか?一度狂ったもんは簡単には戻らんやろ?」
平然として穏やかな顔で悠真が私に答える。
ゾクリとした。
一度狂ったものは戻らない。
「そんな事ないわ!」
何故か叫んでまう。
悠真が自分の病気を諦めてると感じるのが悲しくなるから…。
「来夢?」
「お父さんかて5回も手術して大丈夫やったんや。あの桜かて来年はきっと咲く。」
「ああ、そうやな。」
私の哀しみなんか全く感じない悠真が私に同意したフリだけを見せて来る。