この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第39章 長いな…
「ええ加減にしてくれや。」
悠真が低く呟く。
「ええ加減って、この問題はええ加減に出来る事とちゃうやろ?」
「ふざけんな!」
悠真が私を怒鳴りつける。
「ふざけてなんか…。」
「20年、気付かんかったんやろ?今更知ったからって何になるねん。」
「今更でも…。」
「うぜぇよ。お前は俺のオカンかよ?」
悠真が私を他人だと決めた瞬間だった。
「ゆう…。」
「しばらく、俺を1人にしてくれ。」
後は何を言うても無駄だった。
家族ですらなくなった。
私の車を駐車場に入れて、一応は私をマンションの前までは送ってくれる。
「じゃあな。」
私に背中を向けて悠真が立ち去る。
振り返る事はしない悠真。
いつだって立ち止まって振り返るのは私。
だって、振り向けば悠真が必ず居た。
今はもう居ない。
私の長い1日が始まった。
朝起きて仕事に行く。
無表情なまま仕事をこなす。
現場を回り、事故やミスなどなく完璧な段取りで工期を進めていく。
それが私の仕事だから…。
余計な無駄話などしない。
よそ見もしない。
集中しなければ事故で生命を落とす危険があるのだから何も考えない。
そうやって自分を追い詰めるから1日が長くなる。
仕事が済めば、買い物をして家に帰る。
自炊する。
料理をしながら考える。
私は1人だから…。
野菜やお肉を余らさないようにしなければ…。
そんな考え方をすると食事が僅かな物になる。
少し前なら焼き魚に金平、お浸しにお味噌汁というスタイルで栄養バランスに気を使ってたのに…。
今は焼き魚だけで白いご飯を胃袋に流し込むだけの食事になってる。