この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第42章 神の湯…
なのに悠真が私を引き寄せて抱きしめる。
「ごめん、寒かったよな…。」
凹む悠真の声がする。
悠真なりに気を使ってるつもりなのに、それが届かない時はやたらと凹む悠真が居る。
「大丈夫だよ。相馬さんのホッカイロ固めにポカポカだったし…。」
相馬さんのようにカイロやヒートテックを用意すれば良かったと悠真がいじけてまう。
「大丈夫…、楽しかったから。大丈夫…。」
6歳の子をあやすように私は悠真の頭を撫でてやる。
こういう時はしばらくは悠真が私から離れようとはしない。
「眠いからホテルに行こう。」
私から言うてやる。
不眠症の悠真ならこんな深夜でも大阪まで平気で運転してくれる。
それでも凹む悠真に私は満足だったと感じて欲しい。
「腹は減ってないか?」
「ラブホならこの時間でもルームサービスとかあるんとちゃうの?」
「ラブホでええんか?」
「高速の入り口付近にあったやろ?」
「あれはモーテルや。」
「似たようなもんやろ?」
そんな会話を始めると悠真が車を走らせて山道を降りて行く。
「お父さんのドリフトに見慣れてたから、ラリーにはドリフトが付きもんやと思うとった。」
「オッチャンなら大型ダンプでもドリフトしそうやからな。」
「悠真んとこのおばちゃんかて原付きでドリフトするやん。」
「オカンはアホやからな。」
「お前もじゃ。」
笑いながら、いつもの軽い会話が弾む。
そのせいで気付かなかった。
悠真が私を傷付けたと思い込んでる事実に…。
そして私を傷付けた悠真は私から逃げようとする癖がある事すら忘れてた。
この時から微妙にズレ出す運命の歯車…。
だから運命なんか嫌いだと思う。
まだ何も知らずに悠真の傍に居てやればええくらいにしか考えてなかった私だった。