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振り向けば…
第42章 神の湯…
「違うの…、あの子の場合はそういう部分が難しい子やから。悠真が唯一受け入れる人間はずっと来夢ちゃんだけなんよ。」
おばちゃんまでもが私を見て寂しい顔をする。
どうやら、この旅行中は悠真の説得役を私がするべきなのだろうけども、あの拗ね方だと簡単には行きそうにない。
やはり、ため息が出る。
「悠真…、お腹空かへんか?」
再び出発する車の中で悠真に聞いてみる。
「全く減ってない。」
平然と車を運転しながら、そないな答えが返って来るとそれが本来の悠真なのだと感じて悲しくなる。
悠真が私の頭を撫でて来る。
「来夢まで気を使う必要なんかないねん。お前ん家の家族旅行なんやからな。」
「だったら悠真もええ加減に機嫌治せや。お前かて家族やろ?」
「んー…。」
生返事…。
自分が気に入らないとこの返事。
「ゆう…。」
「この話は終わりや。俺は来夢とだけなら楽しむつもりで来たんやからな。」
カーラジオで悠真が私の好きな音楽をかけてご機嫌を表すように鼻歌を歌い出す。
昔から悠真の家族旅行は私とだけ楽しんで来た思い出が蘇る。
ただ2人でじゃれ合い喧嘩して眠った幼い頃の記憶。
今もそういう家族旅行にしか興味がないと悠真は考えてる。
車は無事に目的の旅館に着き私は新たな問題に直面する事となる。
部屋は二間続きの大部屋。
真ん中に仕切りが有り、奥の狭い方を女性3人。
入り口側の広い方を男性4人が使うとお父さんが言うけど、どうせお父さんと悠真のおばちゃんが夕食のビールで酔っ払ったら、そんな部屋分けは無駄になる。
「とにかく浴衣に着替えて風呂に行くぞ!」
お父さんが張り切り出す。