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振り向けば…
第43章 何でもない…
夕食は相変わらず…。
旅行中で旅館だと言うのに…。
「さぁ、呑め!どんどん呑め!奈美、今夜は朝まで呑むぞ!」
「当然やん!」
お父さんと悠真のおばちゃんは年越しで飲む気満々で瓶ビールをグラスに並々と注ぐ。
「ほら!藤井さんも呑め!」
「頂きます。」
お人好しの藤井さんも強制参加させられる。
「来夢!海老は旨いか?」
黙々と食事を食べる私にお父さんが聞いて来る。
私の好きな甘海老のお刺身がメニューの中にある。
「うん…。」
「なら、お父さんの分もやるから。」
来人や悠真も黙々と食事をするからお父さんなりに気を使ってるのを感じる。
お父さんはおばちゃんの為に藤井さんを家族として受け入れるつもりなのがわかる。
龍平おじさんの親友だったお父さん…。
でも、おばちゃんの幸せを考えるなら藤井さんを受け入れようと決めたのだ。
それを肝心の悠真が受け入れようとしない。
「ご馳走様…。」
まずは来人が席を外す。
「父さん達は朝までだろ?俺は向こうで寝る。」
来人がそない言うて女性用と決めてたはずの部屋に移動する。
「なら、俺も…。」
一言も話をしない悠真が来人に従うように右へ習えをしやがった。
不眠症のくせにー!
そう叫びたくなる。
悠真が襖の向こうに姿を消すとおばちゃんが大きなため息をつく。
「大ちゃん、やっぱり悠真にはまだ早かったかも。」
おばちゃんがお父さんに向けてそんな言葉を言う。
「悠真かて奈美がそのつもりなんはわかっとるやろ。もう子供やないんやし。ただ他人を受け入れる事に慣れてないから、ああいう態度になるだけや。」
ビールを飲み干しながらお父さんがおばちゃんに説明する。