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振り向けば…
第43章 何でもない…
ゆっくりと悠真が振り返る。
「悪い…、起こしたか。」
私を見て悠真が慌ててパソコンを切る。
「ん…。」
「来夢はちゃんと寝ろ…。」
静かで優しい声。
大きくて温かい手が私の頭を撫でる。
「悠真も…。」
眠ってよ。
私と…。
少しでも…。
そう言いたいのに私の瞼が重くてすぐに悠真が見えなくなる。
感じるのは悠真の手の温もりだけ…。
「おやすみ…。」
頬に悠真の唇が触れたような気がした。
翌朝は来人に起こされた。
「姉ちゃん…、いつまで寝る気やねん。」
呆れた顔を私に向ける弟に朝から気分が悪いとか考えてまう。
「今、何時?」
「7時…。」
「お父さん達は?」
「もうとっくに起きとるわ。今朝の朝食は7時半からやぞ。」
「うげっ!?」
冷静な弟の言葉に慌てて布団から飛び出した。
お正月の特別メニュー。
朝食はお雑煮とお節料理になるから部屋食になる。
仲居さん達が朝食を運んで来る前に着替えて顔を洗わないとみっともない事になる。
悠真の姿は既にない。
弟が居なくなり急いで着替えを済ませて洗面所に行き顔を洗う。
メイクなんかする余裕がない。
「おはよう…。」
ひとまずは朝食の席に座るのが先だ。
「相変わらず来夢は来人と違って寝る時間も起きる時間も自由人よね。」
お母さんが私を叱るように言う。
「お前、今は一人暮らしやけど会社とか遅刻してないやろな?」
お父さんまでもが私を心配そうに見る。
夕べ深夜まで飲んでた人達が何故朝から元気なんだと私の方が聞きたくなる。
いや、私以外にもう1人…。
豪快に欠伸をする藤井さんが居た。