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振り向けば…
第43章 何でもない…
おばちゃんがそんな藤井さんを豪快に笑う。
「あの程度で寝不足か?」
「いや…、あんなに呑むとは思ってなくて…。」
「大ちゃんと呑む時は朝までの覚悟が必要やで。」
わざとらしいくらいに、おばちゃんはご機嫌で藤井さんと話す。
「オカンは底なしやからな。真面目に付き合ってたら馬鹿を見るよ。」
ポツリと悠真が藤井さんに声を掛ける。
「悠真!あんたは余計な事を言うな。」
「やかましいわ。オカンみたいな化け物に付き合わされたら藤井さんが可哀想やろ。」
「つまり、あんたは化け物の子やから自分も化け物や言うてる事になんねんで。」
「子供の理屈かよ…。」
少しだけ悠真が笑うからおばちゃんがホッとした表情を見せて悠真といつもの喧嘩を繰り広げる。
夕べのおばちゃんの気持ちが悠真にちゃんと伝わったのだと思う。
『あの子に孤独だけは感じさせたくないんよ。それだけは2度としないって決めたんや。』
そう言い切ったおばちゃんの為に悠真は藤井さんを受け入れようと努力する。
悠真は人の気持ちがわからない男じゃない。
いつか私の気持ちもちゃんと伝わるはず。
その気持ちが伝わった時に私と悠真の関係が変わる事を期待する。
状況の変化を経て途端に、ご機嫌になるおばちゃんと私。
「やばい!お節料理が3段の重箱やで。」
「伊勢海老が入ってるー!」
「ちょっと、朝からウニとイクラって…、豪華過ぎない?」
並んだ朝食にはしゃぐ女性陣…。
弟は会話を無視するように黙々とお雑煮を食べる。
「今回は半分を藤井さんが出してくれたから、かなり奮発したんや。」
お父さんがドヤ顔をする。
いやいや、半分を藤井さんに出して貰ったなら藤井さんに感謝すべきでお父さんがドヤ顔をするのは恥ずかしいやろ?
私とお母さんが呆れてお父さんを見る。