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振り向けば…
第43章 何でもない…



温泉の神様を祀るという神社…。

豊富な湯量は神からの恵みと考えた昔の人のストレートな考え方に感心する。

現代人は複雑に考え過ぎておかしくなる。

あまり考えるタイプじゃないうちのお父さんはよくニュースなんかでパワハラやセクハラ問題が出ると不機嫌な顔をしてテレビに文句を言う。


『今の若い連中は、そういう言葉に守られるのが当たり前やと思うて甘ったれとる。』


それはお父さんの会社に新人の男の子が入って来てすぐの事だった。

その子は高校にすら行かずに半分引き篭もりのような生活をする子。

親が子供の将来を心配してお父さんの会社に就職をさせたいと連れて来た。


『自分の仕事先を決めるのに親が付き添うんですか?』


お父さんは一番始めに、その両親に子供を甘やかすなと釘を刺したつもりだった。

それからひと月くらいは辛い肉体労働でも、その子は黙々と仕事をするタイプだったからお父さんは何も言わなかった。

なのに…。

何を考えたのか、その子が現場で作業中の重機の前にフラフラと出て来たらしい。

そんな事をすれば、お父さんが重機で崩そうとしていた家の瓦礫の下敷きになる事故が発生する恐れがある以上、他の職人さん達が慌ててその子を現場から連れ出した。

事故もなく作業を済ませて重機から降りたお父さんはその子に向かって


『ふざけんな。死にたいんか?死ぬつもりなんやったら他所でやってくれ!お前みたいな奴は仕事の邪魔になるだけや!』


と怒鳴り付けた。

翌日、その子は会社を無断欠勤。

更にその翌日、その子の母親がやって来た。


『うちの子は現場で落とした携帯を探してただけなんです。なのにそれをいきなり怒鳴り付けるとかパワハラを受けたと言うてます。もう仕事も行きたくないと…、責任を取って下さい。』


母親の言葉に誰もが唖然としたらしい。


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