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振り向けば…
第43章 何でもない…
お父さんはその母親に
『携帯の1本や2本くらいなんぼでも弁償したる。けどな、息子さんの生命は弁償出来へんねん。そんな考え方の奴をうちの会社に入れんとってくれ。』
と言い返した。
その後が最悪だった。
母親の依頼を受けたという弁護士がパワハラでお父さんを訴えるかもしれないと言うて来た。
幸い、藤井さんの知り合いの弁護士さんを紹介して貰い、その弁護士さんがきちんとした対応をしてくれた為にお父さんのパワハラ疑惑はすぐに終わった。
今回の家族旅行に藤井さんが同行したのは、そういう経緯もあったらしい。
今はそういう時代…。
人の考え方が複雑な時代…。
私と悠真との関係もますます複雑だと感じる。
神社で参拝をしながら私は祈る。
お湯の神様…。
今年も悠真と居られますように…。
ストレートな神様にはストレートにお願いするのが一番だと、単純にしか考えられないお父さんの娘である私は単純に祈る。
「何を願った?」
悠真が私に聞いて来る。
「悠真は?」
複雑に考える悠真に聞き返す。
「俺は願いはせえへん。願い事は自分で成し遂げる主義なんや。」
運命を信じるくせに神様を信じない悠真。
神様を信じるくせに運命を信じない私。
赤い糸はまだ繋がってない。
それを繋ぐ手立てを私は神頼みをして模索する。
「さて来夢。愛媛の名物と言えば?」
クイズのように悠真が私に聞きやがる。
「みかん?」
「タルトと坊ちゃん団子や。」
悠真がニンマリと笑う。
お父さん達とお酒を呑む事はしないけど、甘党は甘味処のチェックは完璧らしい。
直ぐ近くの商店街でロールケーキの生地に餡子が詰められたタルトと3色の団子を串に刺した坊ちゃん団子を堪能する。