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振り向けば…
第44章 これは現実…
そんな私を理解してくれてるのは今も昔も悠真だけなのだから私は悠真の事しか考えられない。
夕食まで木村さん達と一緒に食べて女子会は尽きる事なく盛り上がる。
さすがにそろそろ帰ろうとなった頃には夜の11時を過ぎていた。
そんな私のお正月はあっという間に終わり、いつもの日常がやって来る。
平日は仕事…。
週末は悠真と食事をして映画を観に行ったりする平凡な毎日。
2月の半ばに悠真と食事に出掛ける。
「ほら、チョコレート…。」
バレンタインデーが平日の中日だったから、その週末に悠真に渡す事になる。
「あんな…、来夢…。」
恐る恐ると悠真が私の顔色を伺うように話をする。
6歳の頃と変わらない情けない顔をする時は悠真に後ろめたい気持ちがある時だ。
「なんやねん?」
こういう時は警戒する癖が付いた。
「来月からかなり大きな仕事で身動きが取れなくなりそうなんや。」
「そんなに大きな仕事なんか?」
「今は東京側と打ち合わせ中やけどな。アシスタントを雇うかもしれん。」
「アシスタント?」
「東京の会社は新人公募のコンテストをやってるからな。その新人を紹介してくれる予定になってる。あの会社は少しでも才能のある新人を見つけては雇うって感じなんや。」
悠真も高校生の時に応募したらしい。
「まさか!?」
「そん時の賞金で大学の入学費用が出せた。」
悠真がニヤリと笑うてドヤ顔をする。
その後はまだ学生だからとアルバイト的な仕事ばかりを引き受けて来た悠真。
今やご立派な社長様。
既に従業員の1人や2人を雇うててもおかしくはない立場ではある。
「あの部屋で従業員を雇うんか?」
「オカンが嫌がるなら仕事場を別に借りるかもしれんけど…、オカンかて連休が終わったら出て行く予定やから、まだわからんわ。」
連休明けには我が家とアパートが完成する。
私の一人暮らしも終わり、悠真と2人での時間が取れると思うてたのに…。
従業員を雇うと、ゆっくりとした自由な時間がなくなってまう気がする。