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振り向けば…
第44章 これは現実…



必要な資格がない以上、未だに見習いの立場を卒業出来ない修斗君にため息をつく。

必死感を感じない…。

今年、新しく入って来た子は営業部。

この子にも必死感を感じない。

必死感を感じるのは唯一の岩谷さんだけ…。

私の車で現場に移動する最中でも2級資格の教科書を開いてる。


「修斗君にも見習って欲しいわ。」


思わず自分が上司である立場を忘れて愚痴をこぼす。

岩谷さんがクスクスと笑う。


「僕はもう後がないだけですよ。」

「後がないって事はないはずですよ?」

「森本さんは若いなぁ。」

「修斗君よりかは大人です。」

「そうですね。だけど彼にはまだ守るものがないってだけなんですよ。」

「守るもの?」

「彼は実家で親と暮らしてて生活にも困ってない。彼女も居ないらしいから気ままに自由に仕事が出来る。家族を自分が養わなければとか、そういう現実を感じないと男はなかなか現実という世界を受け入れない生き物です。」


家庭崩壊をやっと受け入れた岩谷さんだから今は必死なんだと言われると、悠真にもそんな必死感を与えなければ私の存在は今のままなのかもしれないとか考えてまう。

私は当たり前に悠真の傍に居る存在ではいけないのだろうか?

考えたくない不安定な関係。

そんな現実から目を逸らしながら仕事をする。

休日は小説を書いては時間を潰す。

あれから悠真からは1度だけ連絡が来た。


『相馬さんが食事に誘って来た。来夢だけでも行って来るか?』


たった、それだけのメッセージ。

私だけでもという事は悠真は忙しくて行けないのだろうと考える。


『悠真が行かないなら行かない。相馬さんには食事とか気を使わんとってて言うといて。』


そう返事を返してから全くメッセージは来ない。


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