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振り向けば…
第44章 これは現実…
もし、私が悠真とどうしても行きたいと我儘を言えば悠真はどうしたのだろう?
物わかりの良い女をひたすら演じ続ける毎日。
ふと時計を見ればもう夕方前。
買い物に行かなければ今夜はコンビニのおにぎりを食べる事になる。
痩せたら、また悠真に心配をかける。
いつもの私の悪い癖が出てる事実をこの時の私は気付いてない。
聞き分けの良い優等生の女を私は悠真に演じてる。
唯一、背伸びの必要がない悠真に私は背伸びする。
散歩がてらに商店街へと向かう。
昔とは随分と様変わりした商店街。
市場だった部分は大型スーパーに代わり、コンビニなどの便利なお店が連なるようになった。
今も昔も変わらないのはその商店街に入り口の手前には立派な桜の木が何本か植樹された小さな公園があるという事。
その公園の大きな桜を眺めながら商店街へと向かう。
夕日に照らされた桜の花びらが一段とピンク色を濃くする時間帯。
ふわりと風が吹くたびにハラハラと舞い散る桜の花びらの中に見慣れた背中が目に入る。
広い肩幅…。
スラリと長い足。
スーパーの袋を手にして私の目の前を私と同じように桜を眺めながら歩く男。
「悠真!」
その背中に飛びつきたくなる。
ゆっくりとその人が振り返る。
「来夢…。」
いつもと変わらない穏やかな笑顔。
おばちゃんに頼まれたお使いか?
仕事の方は落ち着いたんか?
聞きたい事がいっぱいある。
「ゆう…。」
私が口を開こうとした瞬間、もう1人、私に向かって振り返る人が居た。
サラリとした亜麻色のストレートなロングヘアーの女の人。
その人が悠真の肘に手を当てて
「お知り合い?」
と口を開く。