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振り向けば…
第44章 これは現実…
映画のワンシーンを観てる気分だった。
艶やかなピンク色の唇。
まつ毛が長くキラキラとした瞳。
真っ白な肌…。
悠真に添えられた手を見ると綺麗に整ったその長い指先には綺麗なネイルが施されてる。
私達の周りに再び風が吹くと桜吹雪が舞う中で彼女の長い髪がふわりと靡く。
なんて綺麗な人なんだろう…。
まるで桜の妖精が舞い降りて来たような人。
背が高く、悠真の肩くらいまである。
少しタイトな桜色のワンピース。
スラリと伸びた足。
お似合いの2人がとても自然に並んでる姿に何故か胸が痛くなる。
チビで化粧すらしてない私は悠真が岡山で買うてくれたデニムの寸胴のシャツワンピースを握り締めて俯く事しか出来ない。
「俺のもう1つの家族…。」
低く重い声がする。
「ああ、もしかしてお母様が言うてらした、お料理上手な妹さんって…。」
鈴が鳴るような声がする。
「来夢?」
私の頭に何かが触れる。
それはいつもの悠真の手。
なのに、その手から逃げるようにして私の身体がビクンと強ばった。
「来夢…?大丈夫か?」
これは夢?
これは現実…。
妄想ばかりを書いてた私は現実を受け入れるのに時間がかかるらしい…。
「大丈夫…。」
呟くように答える。
「買い物か?」
「うん…、冷蔵庫になんもない。」
「なら、うちに来いや。久しぶりにオカンと一緒に飯でも食おうや。」
悠真はその綺麗な女の人なんか存在しないみたいに私に話す。
もしかして見えてるのは私だけ?
これは私の不安が作り出した妄想?
いつもと同じ笑顔をする悠真に問い質す。
「仕事は終わったんか?」
やっと悠真に笑顔を向けてやる。
「まだまだかかるわ。悪いな萌奈(もな)、もうしばらくは面倒みて貰うぞ。」
悠真の笑顔がその女の人へと向けられた。
沢口 萌奈…。
悠真が雇うと言うてたアシスタントが彼女だったと知った瞬間だった。