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振り向けば…
第44章 これは現実…
「久しぶりやな。来夢ちゃん。」
まだ夕方なのにビールの缶を握るおばちゃんにそう言われる。
「おばちゃん、もう飲んでるんか?」
「悪いか?最近は萌奈ちゃんが全部やってくれるから至れり尽くせりって生活をしてるんよ。」
おばちゃんが台所に並ぶ悠真と萌奈さんの姿を嬉しそうに見る。
おばちゃんにはお似合いの2人が若夫婦にでも見えてるのだろうか?
私は久しぶりの悠真の家で居心地の悪い思いをする。
リビングには物が増えてる。
雑誌なんかは前は床に散らかってたのを私がソファーの前にあるガラステーブルの上に束ねてた。
今はそのソファーの隣に私の知らないマガジンラックが置いてあり、雑誌はそこにきちんと収まってる。
リビングの造り棚にはコンポとCDやDVDくらいしかなかったのに…。
可愛らしい観葉植物と私の知らないアロマ蝋燭の小瓶なども並んでる。
半年、来なかった部屋は私の知らない部屋になる。
「なんか緊張しちゃう。」
萌奈さんが悠真に甘えた声を出す。
「何が?」
「来夢さん…、お料理上手って聞いてるから。」
「萌奈の飯も旨いから大丈夫。」
台所からはそんな会話が聞こえる。
おばちゃんが私の顔を見る。
「あの2人…、なんか馬が合うみたいで、ええ感じなんやけど来夢ちゃんはどない思う?」
そんな事を聞かれるとか全く考えてもみなかった。
「どないって…。」
「もし萌奈ちゃんがこのまま悠真と上手く行ってくれるんなら来夢ちゃんにも、もう迷惑かける事もないと思うんよ。」
「私は…、別に迷惑とか…。」
「迷惑やろ?何をやっても中途半端な男やから。龍平とは大違いやわ。」
多分、おばちゃんは酔ってるのだと感じる。