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振り向けば…
第45章 臭いよ…



「萌奈ん家は電車を2回乗り換えて通勤に2時間かかるんや。車でも高速飛ばして1時間はかかるからな。今回の仕事が終わるまでは泊めた方がええってオカンが決めたんや。」

「おばちゃんが…。」

「まぁ、萌奈としては今回の仕事が終わったら、この近所に引越しする事を考えるらしい…。」


平然と話す悠真に苛立ちしか感じない。

こいつには人の気持ちがわからない。

こいつにわかるのはギブアンドテイクだけ…。

萌奈さんが悠真の為にと頑張れば頑張るほど悠真は萌奈さんに激甘の態度を取る。

それは夢もなく不安定な女の子には夢心地の環境。

この人に愛されたいと勘違いを産み、この男に傷つけられる。

萌奈さんが居れば食欲を取り戻す悠真だから、萌奈さんが居れば眠れるようになると言い出す悠真も時間の問題なのだろう。

その状況には私の存在は邪魔なだけになる。

20年も一緒に居て、グズグズとする私と悠真におばちゃんは見切りを付けたのだと思う。

だったら、新しく家族の中に入って来た萌奈さんにおばちゃんは期待をする。

悠真はそんなおばちゃんの為なら、きっとなんでもするはずだ。

いつまでも藤井さんを待たせてるおばちゃんだから…。

私の居場所はもう無いのだ。

何度も自分に言い聞かせる。


「来夢?」

「帰るわ。」

「送ったる。」

「要らんわ!」


そう叫んで悠真の家を飛び出した。

私がそういう行動に出ても悠真は平然と私を追いかけて家を飛び出して来る。


「おい、来夢?」

「来なくてええから…。」


萌奈さんのところに帰れや!

エレベーターの中でそう叫びそうになる。


「来夢?」


いつもの大きな手が私の頭に乗せられた。


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