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振り向けば…
第45章 臭いよ…
その手から逃げるようにしてエレベーターから降りて広いエントランスを早足で駆け抜ける。
日はすっかり暮れて夜道になってる。
その道をひたすら早足で自分のマンションに向かう。
「来夢、ちょっと待てや!」
悠真が私の腕を掴むから私はその手を振り払う。
今、悠真の顔を見たら絶対に泣く自分がわかる。
だから悠真がどんな表情をしてるのかなんか全くわからない。
「来夢!」
悠真の怒鳴り声がする。
再び私の腕が強く握られる。
「離してよ。」
下を向いたまま悠真に言う。
「何を怒ってんねん?」
「別に…。」
私の機嫌が悪い事だけは感じる悠真。
だけど何故私の機嫌が悪いのかが理解が全く出来ない悠真。
こんな人…。
好きになんかなるんじゃなかった。
悔しさと寂しさと哀しみの中で後悔する。
こんな人…。
人の感情の理解が出来ない男…。
だから止めておけって言うたやろ?
弟の来人なら、きっと私を馬鹿にしてそう言うはず。
悠真には無理なんだ。
やっと、それがわかった自分に泣きたくなる。
お父さんもお母さんも悠真のおばちゃんも、それがわかってたから私が悠真を選ぶ必要はないのだと遠回しに言うて来た。
悠真自身も私を傷付ける事しか出来ないと言うてた。
私が傷付く理由すら理解が出来ない悠真。
「仕事が忙しいんやろ?私になんか構わずにさっさと帰れや。」
「そりゃ、帰るけど…。」
「早う帰らな、萌奈さんが心配するで。」
「あー、萌奈な。来夢はどう思うた?」
平然と私に聞いて来る悠真にムカついた。
「さぁな。おばちゃんは随分とお気に入りみたいやけど。」
ずっと俯いたまま嫌味だけを言う。