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振り向けば…
第46章 泥棒猫…
一度壊れた心は簡単には治らない。
打ち消そうとする不安に何度も押し潰される感覚…。
こんなの私じゃないと思うのに…。
「あの人が居たベッドは嫌っ!」
仕事に疲れてる悠真に自分の嫉妬をぶつけてまう。
「シーツは変えたぞ。」
「でも、やだ!歯ブラシだってまだあった。」
「捨てたらええやんけ?」
「やだ!」
悠真の呆れた声に子供みたいな反応しか出来ない。
両親にすら我儘を言うた事がない私が悠真にだけ我儘になってまう。
「わかった。落ち着け…。」
私の背中を撫で続ける悠真が私の頭にキスをする。
「ゆう…。」
「わかったから…、ベッドは捨てたる。仕事が終わったら新しいのを来夢と買いに行く。2度と他人をうちには入れない。だからお前はちゃんと寝ろ。」
「どこで?」
「仕事部屋のクローゼットに俺が使ってた布団がある。それなら我慢出来るか?」
「うん…。」
「なら、そうしろ。お前が納得するまではお前の好きなようにすればええ。」
私を傷付けた事に悠真も傷付いてる。
「ゆう…。」
「なんや?」
「キスして…。」
「だからっ!?」
それだけは困ると悠真が情けない顔をする。
なのに不安が終わらない。
今も悠真に寄り添う萌奈さんの姿がチラついてイライラとする。
「ゆう…。」
軽くリップ音が唇で鳴る。
「我慢してんねんから…、わかってくれや。」
ガックリと項垂れる悠真にしがみつく。
今までに一度も感じた事のない恐怖にずっと支配されてる感覚が収まらない。
「ごめんなさい…。」
悠真に初めて本気で謝る私が居た。
「構わん。俺が悪いんやからな。」
いつものように振舞おうとする悠真だから私の胸に痛みが走る。
一度狂った桜は2度と咲かない。
悠真のその言葉が頭から離れない。