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振り向けば…
第46章 泥棒猫…
連休中で良かった。
大荷物を持って歩く小さな私を通り過ぎる人は旅行者にしか見てないから…。
真っ直ぐに悠真の家を目指して歩く私に向かって軽やかに歩いて来る人が居る。
亜麻色の髪を靡かせて、とても綺麗な笑顔を浮かべる女の人。
狭い歩道で私の身体が強張り立ち止まる。
その人はスタスタと歩きながら私に向かって来る。
私よりも高い背の女性に圧倒されたように私の足が動かない。
「萌奈さん…。」
何故、彼女が…。
そう考える間に彼女が私の横をすり抜ける。
「泥棒猫…。」
鈴が鳴るような声でそう聞こえて来た。
慌てて振り向けば亜麻色の髪を靡かせたまま萌奈さんが私から離れるようにして立ち去る。
泥棒猫…?
私が…?
またしても手が震える。
悠真に言われた呼吸を繰り返して自分に起きたパニックを回避する。
帰らなきゃ…。
悠真のところに…。
僅か5分の道のりがやたらと遠く感じる。
荷物を途中で捨てたくなる。
「悠真っ!」
玄関に飛び込むなり、そう叫ぶ。
仕事部屋から悠真が飛び出して来る。
「どうした?」
「萌奈さんが!」
「萌奈?」
「そこに居た!」
悠真の顔が歪む。
「本当に萌奈か?」
私の考え過ぎじゃないかと疑ってる。
萌奈さんがわざわざ2時間も掛けてこの街にやって来た挙げ句にウロウロとしてる理由を悠真には理解が出来ない。
「泥棒猫って言われた…。」
泣きたくなる。
自分のストーカーの時は全く感じなかった恐怖を悠真のストーカーに感じてまう。
「何考えてんの?あの女…。」
意外と悠真の方は冷静なまま…。
「悠真、ここの鍵は?」
「返して貰ったけど、ほんまにこの辺りを彷徨いてるんやったら鍵も付け替える必要があるな。」
悠真がため息をつく。