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振り向けば…
第49章 ほどほどに…



そうやって強気だったはずの私の心がキングサイズのベッド売り場で一瞬にして絞んでく。

展示してあるベッドは僅か3つ。

その全てのベッドの値札が私のお給料の2ヶ月分を軽く超える事実に驚愕する。


「ゆ…う…。」

「なんや?」

「やっぱり…。」


買うのを止めようと提案する。

だって、シーツだけ新しいのを買えば済む。

私の我儘にこんな大金を悠真に払わせるとかあってはいけない事だと思う。


「買うよ。」


悠真がまるで子供に言い聞かせるように私の頭を撫でて言う。


「悠真…!?」

「もし買わへんかったら、また来夢の呼吸が止まるやろ?2度とあんな来夢は見たくないからな。」

「それは…。」

「ほんまに死ぬんちゃうかと焦ったわ。俺にはたかがベッドやけど、お前には違うんやろ?なら、たかがベッドくらい、なんぼでも買い替えたる。」


悠真の言葉に泣きたくなる。

私の迂闊な我儘のせいで…。

悠真は無茶な買い物を平気でする。

胸が痛くなる。

悲しみの痛みでなく、この人の怖いくらいの優しさに私の小さな胸が高鳴るから痛みが走る。


「悠真…。」

「ん?」


大好き…。

でも恥ずかしくて言えない。

ここは家具屋だし…。

TPOが私の言葉の邪魔をする。


「なんやねん?」


悠真が私を問い質す。


「何でもない。」

「それよりも来夢はどれがええねん。」

「どれでもええよ。」

「あんまりスプリングが柔らかいと来夢とやりにくくなるから、どれでもええって事はないやろ?」


真顔でエッチな事を家具屋のど真ん中で口にする感情無し男を再び蹴飛ばした。


「ちょっとはTPOってやつを学べ!」

「へ?」


この先もこいつは恥ずかしい男のままなのだと理解する買い物…。

ドタバタと暴れる客に不安を感じたのか家具屋の店員さんが私と悠真に近付いて来る。


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