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振り向けば…
第50章 寝るな…
「なんで、ここってパンダの赤ちゃんがいっぱい産まれてるのにニュースであんまり言わんの?」
私の予想以上にパンダが居る。
唯ちゃんと行った動物園には僅か1頭だけだった。
「ここは繁殖研究所やからな。出産に成功して当たり前的な場所や。」
「繁殖研究所?」
「パンダは全てが中国政府からのレンタルや。産まれた子供もレンタル料が発生する。」
「子供が産まれるかもわからんのに!?」
「産まれる前提でレンタルする。だから、東京の動物園も唯ちゃんを連れてった動物園もオスメスのつがいでレンタルをしてる。」
「唯ちゃんと行った動物園はパンダは1頭だけやったやん。」
「それは繁殖に失敗した挙げ句にオスを死なせて中国政府を怒らせたせいや。」
悠真の感情を全く感じる事のない淡々とした説明をひたすら聞く。
動物園は展示だけでなく繁殖目的でレンタルする。
それに失敗すれば当然ながら中国政府の信用を失いパンダのレンタルの話は白紙になる。
白浜では展示よりも繁殖研究の方に力を入れてる為に繁殖率が高く、出産は当たり前の扱いになってる。
「なんか…、可哀想やな。」
パンダに同情したくなる。
「なんでや?」
悠真が私に聞いて来る。
「繁殖目的だけで日本に連れて来られて、恋愛する相手も選ばれへんねんで?」
「絶滅危惧種やった以上は仕方がないやろ?」
「悠真は、もしも絶滅するってなったら誰でもええんか?」
私の質問に悠真が考え込む。
珍しく悠真が答えない。
「悠真?」
「その答えは、ちょっと考えさせてくれ。」
悠真が微妙な顔をする。
嘘でも私だとは言わない悠真。
頭だけで論理的に考えて結論を出そうとする悠真の悪い癖。
その悪癖を寂しいと感じてまう。