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振り向けば…
第52章 無事だよ…
現場によっては8時30分には現場で朝礼をしなければならない現場も存在するが、そういう現場には宮崎さんか行ってくれるから私は朝は焦らずに済む。
今朝もいつも通りだと私が会社に入り、自分のデスクがあるフロアへと向かった。
1階は事務と営業部、それにロッカールームや応接室などがあり、2階が工事部と会議室。
3階が社長室に資料室。
その程度の小さな自社ビル。
迷わず私は階段を上がり工事部の扉の前に行く。
エレベーターもあるけども、ほとんど使うのは社長さんだけというエレベーターは皆んなが遠慮をして使わないという会社。
工事部の扉の前で私がそのドアノブを握った瞬間の事だった。
!?
私の足元が沈む感覚がする。
「きゃあっ!」
そのままそこに座り込む。
床に這いつくばるのに私の身体が飛び跳ねる。
(地震…!?)
それだけは理解が出来た。
大阪の北摂地域を中心とした地震…。
どのくらい揺れたのかがわからない。
いつまでも自分が揺れてるような気がする。
(悠真…。)
助けを求める時の癖。
だって私の耳にはガシャンと何かが崩れたり割れたりする派手な音とキャーキャー悲鳴を上げる事務のおばさん達の声だけが聞こえる。
怖かった。
足が竦んで立てなかった。
ポンッと肩を叩かれる。
「ひっ!?」
「森本さん、大丈夫?怪我したの?」
心配そうに私を覗き込む岩谷さんの顔を見ただけで涙が出そうになる。
「怪我は…、してません。」
ただ手が震えて、声が震える。
「立てますか?」
私を抱きかかえるようにして岩谷さんがゆっくりと立たせてくれた。