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振り向けば…
第6章 俺だけ見てろ…
「俺だけ見てろ…、俺の動きだけ覚えろ。他の事は一切考えるな。」
偉そうにそう言う悠真にムカつく。
「やってるわよ!」
「なら、出来るはずや。」
イライラとしたまま悠真ともう一度踊ってやる。
「完璧やん。」
明日香先輩と日下先輩がホッとした顔をする。
悠真しか見てなかった。
ただ曲に合わせて身体が勝手に動いた。
私に悠真が合わせているように感じた。
その後の紫組は『ぐっさんにヤキモチを妬かす。』がテーマ目標でアラビアンナイトのテーマは打ち消されてしまい、ひたすら私と悠真の練習が繰り広げられるというおかしな状況になってた。
体育祭の当日。
「来夢!俺の弁当は?」
溝口先輩がいきなり私に抱きついて聞いて来る。
「持って来ました。」
「日下が応援団の衣装をわざと俺に見せびらかすから腹が立つ。だから弁当を見せびらかしてやる。」
体育祭は日曜日。
食堂が休みだからと溝口先輩のお弁当は私が作っただけの事。
「なあ、来夢…。」
「はい?」
「可愛いな。」
そう言った溝口先輩がチュッと私の頬にリップ音を鳴らした。
「先輩っ!?」
「マジに来夢が好き、だから来夢の為に応援団するつもり…。」
チームが違うのに溝口先輩が笑うてそんな事を言う。
応援団のダンスにも得点が付けられる。
去年は桁違いの得点で溝口先輩のチームが勝ったと聞いた。
踊るのが好きな先輩。
バタフライが上手い先輩。
大好きだけど私は背伸びをしなければ先輩とは並べない。
「頑張って下さい。」
「おうっ!」
応援団長の印である長い鉢巻きを靡かせて溝口先輩がグランドに戻って行く。