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振り向けば…
第53章 この家族…



怖いよ…。

自分が帰れなくなる恐怖を感じる。


「コンビニでお昼ご飯を買う事になりますね。」


岩谷さんが苦笑いをする。

少しでも違う話をして自分の中に膨らむ恐怖を和らげようとしてる。


「次に見えたコンビニに入ります。」


運転をする私はやっと辿り着いた、そのコンビニでますます恐怖を感じる事になる。


「岩谷さん…。」

「見事に何もないですね…。」


通常なら豊富にある、おにぎり、サンドイッチにお弁当…。

菓子パンにカップラーメンまでの全てが商品棚から姿を消して、暴動でも受けたのかと聞きたくなる。

水はもちろんの事、お茶の1本すらない。


「普通に営業中のファミレスとかなら…。」


岩谷さんが私に気を使う。

しかし渋滞の激しさを考えると迂闊にファミレスなどに入れば全く身動きが取れなくなると予想がつく。


「とにかく、次の現場までで何かを探します。」


岩谷さんにそう返事をして車を走らせる。

誰もがパニックになってて街中が混乱してる。

見えない恐怖がのしかかる。


「森本さん、車を停めて…。」


岩谷さんの言葉に慌てて車を路肩に寄せる。


「岩谷さん?」

「すぐ、そこ…。ほら、パン屋があります。僕は何でも良いので見て来て貰えませんか?」


こんな状況なのに普通に営業をする小さなパン屋さんを見つけた。

小さなお店なのに中には10人近い人が居る。

サンドイッチなどはなかったけど、アンパンやメロンパンなどはまだ買える。

パン屋さんは忙しなく次々と焼きたてパンをお店の棚に並べてる。

サンドイッチなど手間がかかるものは出せないが、より多くの人の為にパンを焼き続けてると思う。


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