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振り向けば…
第53章 この家族…
余震が続く中で足場などがある現場は危険なのだから監督である岩谷さんと連絡が取れなければ大工さん達は帰るしかない。
「回線が繋がり次第、連絡を入れて打ち合わせをやり直します。」
生真面目に岩谷さんが私にそう報告をする。
「足場の安全点検をして次の現場に行きましょう。」
私と岩谷さんの2人で足場の点検をする。
少しでもグラつきを感じる足場があれば2人でそれを撤去する必要がある。
ここでも幸いながら、足場のグラつきなどは見つからずにひとまずは現場周りにロープを張り、立ち入り禁止の札を掲げる。
迂闊に一般人が入って余震で崩れた場合、ロープを張って立ち入り禁止にしていた事実さえあれば、うちの会社の責任にはならない。
そのロープを設置した証拠の写真をデジカメに収めてから、最後の現場へと車を走らせる。
この段階でいつもよりもクタクタだった。
「運転を僕がします。」
岩谷さんが代わってくれる。
最後の現場は会社に近く、いつもなら1時間もかからない距離なのに…。
その現場に着いた時にはもう日が暮れるという有り様に岩谷さんと私も口数が少なくなってた。
最後の現場も無人…。
安全確認と確保だけをして会社へと帰る。
「今日はもう報告書はいいです。」
岩谷さんに早く帰るように促す。
「すみません…。」
私に頭を下げて岩谷さんが帰り仕度を始めた時…。
「森本さんは戻ったか?」
そないな宮崎さんの声がする。
既に7時30分…。
岩谷さんが申し訳なさそうな顔で私を見る。
「宮崎さんに捕まる前に岩谷さんは帰って…。」
苦笑いをして岩谷さんを会社から出し、私は宮崎さんの方に何の用事かと確認に向かう。