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振り向けば…
第53章 この家族…
「宮崎さん。」
「帰って来てたか?岩谷は?」
「もう帰しました。私も報告書だけです。」
「報告書は明日でええから今から一緒に社長室に来てくれ。」
本日、2度目の社長室行き…。
嫌な予感しかしない。
宮崎さんと3階に向かい社長室へと入る。
厳しい顔をする社長さんと情けない顔をする専務さんが私を待ち受けてた。
「悪いな。早う帰りたいやろ?」
厳しい顔のまま社長さんが私に言う。
「疲れました。」
社長さんや専務さんに対して自分の本音はちゃんと言わなければならない。
この会社で私が学んだ事。
「急ぐ話でもないが急ぐ必要のある話なんや。」
よくわからない言い回しで専務さんが私に向かって説明を始めた。
「急ぐけど…、急がない?」
「この地震で死者が出た。」
それは当然の話だから、私にはピンと来ない。
災害時である以上は被害者が出る可能性は0であるはずがない。
問題は…。
「全てが外構壁の倒壊による被害者って事なんや。」
専務さんの言葉を引き継ぐように社長さんが言う。
阪神大震災から大阪や神戸の建物のほとんどで耐震工事が行われた。
学校などの公共施設は当然のように耐震工事が完了している。
だからこそ、今回の地震で被害という被害は最小限で済んだはずなのに…。
外構工事まではさすがに耐震工事は施されていない。
その外構壁の倒壊により死者や怪我人という被害者が出た。
「うちの会社が施工した分は今のところは問題がないんや。けど、あちこちから問い合わせの電話が多発して会社の電話が鳴りっぱなしやねん。」
電話回線の復旧に伴い、問い合わせや修理に関する電話が寄せられてる。