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振り向けば…
第53章 この家族…
人手が足りないと社長さんが嘆く。
「手分けして現状確認の必要があるんや。」
宮崎さんが私にそう言う。
ただでさえ混乱して渋滞で動けなくなる中を私は自分の現場に向かう途中に昔の現場だった外構壁の現状確認をする必要を会社から求められる。
「何件くらいありますか?」
「ざっと300件くらいやと思う。」
当然、営業の人間もその確認に走り回る事になる。
施工問題に寄るひび割れや倒壊はないにしろ、老朽化によるひび割れは絶対的に発生する。
それでも、今回の外構壁の倒壊について施工業者の手抜きを指摘する発言がマスコミから出た以上はうちの会社も出来る範囲で修復などの手配を考える必要があると社長さんが嘆く。
「手抜きなんかしとらん。そもそも自然に対して勝てるはずがないやんけ。」
専務さんはマスコミの発言に怒りを見せる。
私もそう思う。
自然に対して人間の力は及ばない。
だけど被害者の怒りの矛先を作る為にマスコミは施工業者に悪質な会社があるのだと吹聴して事を収めようとする。
被災などの被害者を助ける為に進んだはずの建築でまさか自分が加害者の扱いを受けるとは全く思ってもみなかった。
後は宮崎さんと話し合い、うちの会社で施工した外構工事の現場に私が回れるルートを確保して貰う。
「悪いな。明日までにやっとくから森本さんはもう帰ってくれ。」
疲れ切った顔で宮崎さんが私に言う。
今夜は専務さんと徹夜になる覚悟の宮崎さんが私を家に帰そうと努力してくれる。
「すみません…。」
「森本さんが謝る事とちゃうからな。」
「宮崎さんも無理だけはしないで下さい。」
「若い女の子から、そない励まされたらいつもよりも張りってまうんがオッサンってやつや。あっ!?これってまたセクハラか?」
「宮崎さんには特別にセクハラの部分は聞かなかった事にしてあげます。」
「おおきに…。」
わざとくだらない笑い話をして無理に笑う。