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振り向けば…
第53章 この家族…



明日の私は1時間早く出勤する事になる。

未だに電車の運行目処が立ってない状況だから、車で小回りが利く私が動くしかないという会社の判断。

会社を出たのは20時30分…。

21時過ぎには帰れるはずの道のり…。

悠真のマンションに寄るかを考える。

明日の朝が早いし…。

悠真…、ごめん…。

そう言うしかない。

何故なら会社を出た私の車はまたしても渋滞にはまりこむ。

この時間に有り得ない。

イライラとしながら運転する。

テレビは消してナビにした。

テレビの報道は電車の運休に対する文句と外構壁の倒壊によって発生した被害者の話ばかりだから…。

その怒りの矛先が全部自分宛に向けられてる気分になってまう。

世界中から非難された感覚。

私達は私達の出来る事をしてるのに…。

凹んだ気持ちのまま私が我が家に辿り着いたのは22時を過ぎた頃だった。


「おかえり…。」


低く重い声がした。

私の頭に大きな手が乗せられる。


「悠真?」


何故かうちに悠真が居る。


「悠真君のマンション、停電でエレベーターも水道も停まったんよ。今は復旧してるけど余震が落ち着くまでは来夢の部屋に泊めたりや。」


お母さんが私のご飯の用意をしながら、そない言う。

妊娠とか通い妻とかみっともない事をするなと言うてたくせに困ってたらアッサリと私の部屋に悠真を泊めてまう両親に呆れてまう。


「水道まで停まったんか?」

「高層マンションは貯水槽にポンプで組み上げやからな。停電すりゃ当然停るやろ。」


悠真が膨れっ面でご飯を食べる私を見る。

この辺りでも地震の影響で1時間から2時間の停電があったらしい。


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