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振り向けば…
第54章 七夕だから…
「なんで出来ないんですか?」
負けず嫌いの血が騒ぐ。
なんもせえへんで諦めてまうとか嫌やと思う。
「まず3tの土砂が必要や。それをこの大雨ん中でダンプに積み込むオペとダンプのドライバーを今から確保なんか出来ん言うとるんや。」
既に夕方…。
今から手配をしても明日の昼以降にしか動けない。
雨はますます激しくなる。
そんな危険な作業を引き受けるオペとドライバーなんか都合よくは現れない。
だったら、このまま雨が収まる事を祈るしかないと社長さんが言う。
私と宮崎さんだけが納得出来ない顔をする。
「もしもオペとドライバーが居れば許可をして貰えますか?」
社長さんに確認する。
「3tの土砂はどこから持って来るねん?」
「私の担当現場に残土があります。」
「オペとドライバーは?」
「オペは私が、ドライバーはうちの父に頼みます。」
私の言葉に社長さんも宮崎さんも目を丸くする。
「解体屋の娘さんやったな。」
専務さんだけが私の言う意味を理解してくれる。
お父さんなら…。
たかが3tの土砂を運ぶくらいは大した事じゃない。
収集運搬の許可を持つお父さんは悪天候であっても10tの産廃を平気で運搬する人だ。
「しかし…。」
社長さんがまだうんとは言わない。
「リスクは承知してます。けど、浸水による決壊を神頼みで回避出来るとは私は思ってません。」
宮崎さんと共に社長さんの説得をする。
社長さんが折れた。
ただし作業は明日の朝からの条件。
「夜間作業というリスクまでは認めないからな。」
私や宮崎さんに危険が及ぶ事だけは許さないと社長さんが言う。