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振り向けば…
第54章 七夕だから…
この為に建築に進んだ。
お父さんに褒めて欲しかっただけだ。
お父さんの自慢の娘でありたかった。
今もお父さんが大好きだと思う。
必要分の土砂をお父さんのダンプに積み込む。
作業は出来るだけ手短に済ませる。
「明日の朝一番に現場に着くようにしたる。」
お父さんが乗って来たダンプを私の現場に置いたままお父さんと私の車で家に帰る。
「止めてよ。2人同時に泥まみれで帰って来るとか困るわ。」
泥まみれの濡れ鼠になった私とお父さんを見てお母さんが嘆いた。
「来夢が先に風呂に入れ。」
「お父さんから…。」
「アホか、俺は風邪を引いてもダンプを転がすだけやから余裕や。お前はそうはいかん。」
現場での作業をするのは私なのだから私優先が当たり前だとお父さんが言う。
小さな時から全てが私優先だった。
お母さんがヤキモチを妬くほど私だけを甘やかすお父さんは今も変わらない。
私はまだお父さんに守られてる子供。
お父さんの為に手早くお風呂に入ってからお母さんの手伝いをしてお父さんのご飯の用意をする。
「来夢も座っててええんよ。」
私が大変な仕事をするとわかってるお母さんが私に気を使う。
「お父さんと明日は朝早くに出るから…。」
「お父さんが喜んでるわ。」
「お父さんが?」
お母さんが嬉しそうにはにかむ。
「ほら、鼻歌が聞こえるやろ?」
お母さんがお風呂を指差した。
確かにお風呂からお父さんの鼻歌が聞こえる。
「お父さんがご機嫌な時は必ずお風呂から鼻歌が聞こえるんよ。」
それが嬉しいとお母さんが言う。
お父さんが何故嬉しいのかは私にはわからない。
ただ、ささやかなお父さんの機嫌をすぐにわかるお母さんが羨ましいと思うた。