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振り向けば…
第54章 七夕だから…
悠真は私がわからない。
私も悠真がわからない。
いつか、お父さんやお母さんのようにちょっとした仕草だけでお互いの機嫌がわかるようになりたい。
そんな事を思いながらも私は悠真にメッセージを入れる。
『ごめん、七夕は無理やわ。』
『やっぱりな。どうせ京都も増水で床どころとちゃうやろ?』
『仕事が終わり次第、そっちに行く。』
『別に無理はすんな。』
文字だけで綴る言葉からは悠真の気持ちは全く伝わって来ない。
私の中での感覚は『まぁ、悠真なら大丈夫よね。』という軽い感覚。
私が大変な状況だと理解をすれば悠真は私に文句を言う人じゃない。
この私の過信が後々、悠真と揉める事になる。
今は仕事の事しか頭に入らない。
久しぶりにお父さんとご飯を食べて明日の打ち合わせをする。
お父さんがダンプで土砂を運ぶ間に私は河川敷側の受け入れ準備をしなければならない。
「夜分にすみません。」
宮崎さんに電話をして明日の段取りの依頼をする。
『専務には俺から言うとくわ。問題は河川管理事務局の方やな。』
宮崎さんが唸る。
この土砂降りの雨の中での作業を認めてくれるかがわからない。
朝一番にやってしまうと言うたお父さんの言葉の意味がようやくわかって来た。
昼からなんかやってたら雨が止まない限り作業を認めて貰えなくなる。
やらなければ危険だが、やっても危険だからと二の足を踏む。
社長さんが首を縦に振らないのはその難しさ。
宮崎さんとの電話を切り私はすぐに眠る。
明日は5時に起きて現場に直行する。
眠れなくとも眠らなければと何度もベッドでのたうち回る夜を経験した。