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振り向けば…
第54章 七夕だから…
まだ雨だった。
お父さんと別れて私は河川敷に向かう。
そこで宮崎さんと落ち合う。
「事務局の許可は後付けにする。」
宮崎さんが厳しい顔を私に向ける。
夕べのうちに現場付近では避難勧告が出たからだ。
100%作業許可が下りないとわかってる以上は違法覚悟で私達は作業をする。
事務局が開く前までに作業を済ませなければならないという時間に追われる。
報告も出さない。
今からやるのは万が一川が増水しても街に浸水被害を出さない保護作業。
本来の工程ではないのだから報告などの手続きなんかやってる場合じゃない。
危険が伴うという言葉の前では安全の為にという作業自体を阻まれると誰もがわかってる。
「けど、残土の穴埋めはどないするねん?」
私の現場から動かした3tの残土を戻す段取りを宮崎さんが聞いて来る。
「明日、お父さんの知り合いのところから残土を引き取って戻しておきます。」
その手配もお父さんがしてくれた。
「なんもかんもお父さんの世話になってまうな。」
「うちのお父さん、人助けが大好きな人ですから。」
宮崎さんにお父さんを自慢してた。
元ぼーそーぞく。
それだけで世間が見るお父さんのイメージはあまり良くはない。
だから、こういうお父さんなんだと理解して貰える時はついつい私は自慢する。
「森本さんのお父さんが羨ましいわ。うちの娘なんか俺に近寄るなとか言うんやで?」
宮崎さんが嘆く頃にお父さんのダンプがやって来た。
後は宮崎さんと2人でダンプに積まれた土砂を下ろしながら河川敷の堤防の補強作業をする。
この程度で自然の巨大な力に勝てるかはわからない。
わかるのはやれば被害を最小限に抑える事が出来る。