この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
振り向けば…
第54章 七夕だから…
「ちゃんと休まなあかんで…。」
専務さんが私を睨む。
また倒れたら困るという顔だから私は逆らえない。
「明後日は休みます。」
「そうか…、なら、お昼はうどんを奢ったるわ。」
専務さんの顔が一気に仏様に変わる。
社長さんもそうだけど優しい時はとことん社員に優しくなる専務さん。
専務さんが社員さん全員のお昼にうどんを奢ってくれる事になった。
「この土砂降りで出前なんかしてくれるか?」
「何人かは直接店に行くぞー。」
会社から徒歩2分のうどん屋。
社長さんの行きつけのお店。
今日は仕事の出来ない工事部の人間がぞろぞろと歩いてうどん屋に向かう。
雨続きで嫌な思いを誰もがした。
その仲間意識が強い会社。
家族のような存在の人達と食べるうどんが温かくて美味しかった。
地震や洪水が来ても私達は前に向いて進む。
そしてそれは1人じゃなく家族が居るという安心感の中でやれるという事は本当に心強い事なのだと実感をした日だった。
誰もが危険行為をした私を責める事なく寧ろよくやったと褒めてくれる。
ただ社長さんからは
「2度とするな。森本さんが会社を辞めたら困るんやからな。」
とだけお説教を受けた。
そうやって、皆んなでうどんを食べる頃がこの雨の一番のピークだった。
翌日は雨は続くものの川の増水が引いていく。
私はお父さんのダンプに乗り込んでお父さんと残土を戻す作業をする。
「最近、悠真とはどうなんや?」
ダンプを運転するお父さんにそう聞かれた。
「仕事が忙しくて、なんも話せてない。」
蔑ろにしてるつもりはない。
悠真の場合、束縛をしない関係が長かったせいかお互いが仕事だと口出しをしない癖がついた。