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振り向けば…
第55章 断る…



「その愛情がわからん言うたやん。」


悠真を責める口調になる。

悠真は何度も私の額や頬にキスを繰り返す。


「確かに、愛って不確定なものは俺にはまだよくわからん。けどな、お前が他の男と居ると気分悪いし、自分から抱きたいとか思う女はお前だけや。これって普通は愛してるって事にならんのか?」


悠真が私の顔を覗き込む。

真っ直ぐでいつだって私の目を見て話す人。


「20年…、ずっとお前だけを見てた。」


悠真がはにかんで笑う。

6歳の時と変わらない笑顔。

ちょっと可愛くて私が大好きな笑顔。

20年、私を見て来た人。

だから振り向けば…。

必ず悠真が居た。


「来夢が望む事は俺が出来る範囲でなら、なんでもしてやる。だから俺にはお前ともし逸れても探せる権利をくれ。」


やっぱりプロポーズとしては違和感だらけ…。

それでも、これが悠真の本気のプロポーズ…。


「指輪すら…、用意してない男とか…、最低ーっ!」


私は可愛げなく泣きながら悠真に文句を言う。

悠真がアタフタとする。


「指輪が無いって泣くほど嫌なんか!?明日にでも買うたるから泣くなや!」


本当の意味で私の感情がわからない悠真は私が涙を出すだけで狼狽える。


「指輪は後や。先にお父さんの説得からや。」

「先に来夢と風呂や。泥だらけの作業服の女なんか萎えるだけや。」

「その萎える女と結婚したいんちゃうんか?」

「結婚はする。俺が来夢を養う。だからな…。」


嫌な予感しかしなかった。


「これ以上は他人の為にチョロチョロと動き回るのを辞めてくれ。」


冷たい悠真が冷たい顔で私を睨みつけてた。


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