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振り向けば…
第55章 断る…



時間が止まったように感じた。

他人の為に動き回るな?

つまり…。

それって…。


「仕事を辞めろ言うてんのか?」


私の声が震えてた。

きっと目を有り得ないほどに見開いて悠真に驚愕の顔を向けたのだと思う。


「当然やろ?どうしても働きたいなら、パートとか他の仕事にしろや。」


悠真が私の表情に眉を顰める。


「パート?」

「他人がお前を必要としない程度の仕事や。」

「私が建築に進んだ理由は悠真が一番よくわかってるはずやろ?」

「元々がオッチャンの為やったやろ?なら、オッチャンの会社でうちのオカンみたいにパートタイムで働けば充分やんけ。」


冷静で無慈悲な悪魔の言葉にしか聞こえない。

私の夢を平気で取り上げて、偽りの夢で誤魔化せと囁く悪魔。


「それでええやろ?」


悠真が私に確認する。

悠真と結婚はしたいと思う。

堂々と一緒に暮らせる。

仕事の付き合いとわかってても悠真には時々女性から電話がかかって来たりする。

悠真の話す内容を聞いてたら食事にでも行こうという誘いが多く、いつも悠真は私の顔を見てから


『お気遣いだけで結構です。』


と柔らかく断ってる。

龍平おじさんと変わらないくらいに悠真はモテる。

モテモテのおじさんはおばちゃんの妊娠で変わったのだとお父さんから聞いた事がある。

悠真は私に絶対に浮気をしないと約束をした以上、龍平おじさんのようにはならないと信じてる。

信じてても不安になる。

萌奈さんみたいなパターンが起きたら、きっと私はまたパニックになるだろう。

だから悠真が私と結婚をしたいと束縛をするなら、それに従いたい気持ちもある。


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