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振り向けば…
第55章 断る…



だけど…。


「無理や…、仕事を辞めるくらいなら悠真とは結婚は出来へん。」


それが私の答えだった。

悠真の為に自分の生き方を否定したくない。

悠真を愛してても悠真が私を愛してると言うなら私の生き方も含めて愛して欲しい。

誰かの為にと背伸びをしてもろくな事がない。

私は私のままで良いと受け入れてくれる悠真と結婚をしたいと思うたのに…。


「やっぱ…、来夢も俺に合わせるのは嫌なんやな?」


悠真が哀しみの表情を浮かべて俯いた。

悠真は自分の要求だけで悠真の気持ちを理解しない女を拒否する。


「そうじゃなくて…、悠真…。」

「なら、なんやねん。」

「仕事を辞めたら、それはもう私じゃないって意味なんやで?」

「なんで仕事程度の事で来夢が来夢じゃなくなんねん?何をやってても来夢は俺が知る来夢やろ?」


噛み合わない。

悠真にわかって欲しい焦りから涙が出る。


「ゆう…。私にとっては仕事を辞めるって簡単な事じゃないんだよ。」

「なら、俺がまた萌奈を雇っても来夢は文句を言わんって事やな?」


冷たい顔をする悠真に凍りつく。


「ゆう!?」

「例え話や。本気にすんな…。」


例え話でも心臓に悪い話だ。


「仕事をして俺の事なんか見向きもしなくなる嫁を許すとすれば、俺はお前の代わりが出来る家政婦かアシスタントを雇う必要が出て来る。」

「悠真は仕事が選べるやん!」

「お前を養う必要があるのに仕事なんか選ぶ余裕なんかないわ。」


どうやら悠真の考えでは、あくまでも私と結婚をする前提での話らしい。


「家庭に他人が入るような生活はやだ。」

「だから俺が他の仕事場を設置して人を雇う。」


それは余分な経費がかかり、ますます悠真は仕事に縛られる立場になる。


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