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振り向けば…
第55章 断る…



「はぁ?冗談じゃないわ。おたくの会社が原因の事故なんだからおたくで責任を取ってよね。」


それが娘さんの答えだった。


「そんな無茶苦茶な…。」


宮崎さんが唖然とする。

30分以上も娘さんを説得するけど娘さんは頑として首を縦に振らない。

こんな人を助ける為に…。

私は悠真との時間を作ってやれなくなる。

それでも仕事を辞めるつもりはない。

ただ今の自分の置かれた状況に悔しくて悲しくて怒りだけが湧いて来る。


「わかりました。崩れた壁は撤去せて頂きます。」


私は冷静にそう言うたつもりだった。


「森本さんっ!?」


宮崎さんが叫ぶ。


「当然じゃない。」


娘さんが勝ち誇った顔をする。

私の心がひたすら冷めていく感覚だけを感じる。

こんな人の為に…。

何度もそう考える。

だから…。


「ただし、引き受けるのは撤去だけです。新しい外構工事は他所の会社に依頼して下さい。当社は2度とそちらとは関わりを持つ気はありません。」


まるでロボットのように淡々と言う私だった。


「壁が無きゃ外から丸見えじゃない。」


娘さんが私に食い下がる。

私はドンドンと心が冷めていく。


「今だって丸見えです。しかも道路側に崩れてる以上は道路法に違反になります。それを撤去してやると言うだけ有難いとお考え下さい。」

「どこが有難いんよ?」

「別に構わないんですよ?本来なら当社はこのまま放置して帰るだけです。どこまで行っても災害による倒壊である限り当社の責任にはなりません。」


私は私が知る限りの知識で私の時間を奪おうとする人と戦う。

他人の為にと働くつもりだけど悠真との時間までは奪われるつもりはない。


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