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振り向けば…
第6章 俺だけ見てろ…
胸だけの彼女って、酷い扱いだと思う。
挙げ句に悠真が
「けど、デカいだけの乳はあかんな。牛の乳搾りしてる感覚やから触ってておもろないってわかったわ。乳はほどほどに柔らかくて感度のええ女の方がええと学習した。」
とか言いやがる。
「近寄るな…。」
「へっ?」
「2度と私に近寄るな!」
「来夢?」
ポカンとマヌケな顔をする悠真を無視して家の中に飛び込んでた。
情けなくて涙が出る。
いつからあんなに変態になったんだ?
まだまだ子供で背伸びをする恋愛しか出来ない私には悠真の変態ぶりが泣きたいくらいに情けないと思うてもうた。
悠真とは全く口をきかない毎日が始まった。
部活は先輩達のパラパラを見るだけの日々…。
1日が長くて疲れるだけの毎日。
家に帰るとお父さんが居る。
悠真も居る。
ああ、またか…。
ため息が出た。
「あんな…、来夢…。」
気不味そうにお父さんが言う。
「今度はどこを切るつもり?」
始めの2回の手術で腸が人の3分の1になったお父さん…。
次の2回の手術で胃が3分の1になり、食事は少しずつしか出来ないからと1日5食を食べるようになったお父さん…。
すっかり痩せてガリガリになったのに…。
「看護婦さんにナイスボディーって羨ましがられるんやで…。」
と呑気に笑うお父さんの身体にもう切る場所なんかないやろうと思う。
「膵臓癌…、だから膵臓を半分にする。」
お父さんが穏やかな顔をする。
悠真は私を睨むようにして黙ってる。
「膵臓を…。」
「あんな…、来夢…。これが最後や。これ以上、俺も身体ん中を空っぽにされるのは迷惑やと病院に言うた。だから、この手術が最後や。」
お父さんが真っ直ぐに私を見て言う。