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振り向けば…
第56章 仕事やから…
そのまま勢いだけでお父さんのところに行き私と結婚させて欲しいと言うた悠真。
アホは相変わらずやと笑うしかない。
「いつまでも人の胸を触ってんと、とにかくご飯を食べに行こうや。」
「寿司か焼肉か?」
「寿司…。」
「行くぞ。」
必ず私が食べたいものが優先。
悠真自身に食べたいものの欲求が薄いからだ。
私が作る卵焼きとハンバーグにはこだわる。
だけど、それが絶対にないと困るという感覚のない悠真だから私優先でも平気な人だ。
そうやって私優先だからと私が調子に乗る事も許されない。
ギブアンドテイクが成り立たないと悠真は自分が蔑ろにされてると感じる。
つまり私の仕事を認めてくれた悠真を今まで以上に私の方が優先してやらなければならない。
近所のお寿司屋に行き、この先について2人で話し合う事にする。
「まずオッチャンが認めてくれんと話にならん。」
お父さんに認めて貰えなかった事がよほどに堪えた悠真がため息を吐く。
「あのさ、例えばの話やで?」
「ん?」
「東北震災みたいなんが起きて私が行方不明になるとするやんか?」
「来夢が?」
「悠真はどないする?」
「そりゃ当然、捜索するやろ。その権利が欲しいから結婚してくれ言うたんやんけ。」
私に当たり前を言われると悠真は不機嫌になる。
「けど2ヶ月も3ヶ月も見つからんくて皆んなから絶望的やから諦めろ言われたらどないする?」
仮定の話が苦手な悠真。
想像しても感情が湧かないからだ。
「諦めなあかん状況なんやったら、来夢の葬式を出さなあかんやろな。」
感情のないお馬鹿さんは寿司を口に放り込み平然と私の葬儀をして諦めるとほざきやがる。