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振り向けば…
第56章 仕事やから…
「悠真が死ね!」
「なんでやねん!?生存が絶望的ならしゃあないやんけ?」
「そんなんやから、お父さんに反対されんねん。」
私の方がため息を吐きたくなる。
「つまり、周りからどない言われても俺は来夢が生きてると信じて探し回れって事か?」
「まぁ、あくまでも例え話やから時と場合にもよるかもしれんけどね。ただお父さんが何回も癌になって絶望的やった時もうちのお母さんだけはお父さんを信じてたやん。」
「来夢さんは疑って諦めたもんな。」
嫌味ったらしく悠真が言う。
つまらん事はしっかりと覚えてやがる悠真に微妙にだけど腹が立つ。
「私の事はええの!とにかく、そういう状況になった時にお互いがどれだけ信じて我慢が出来るかが多分結婚には必要な事やと思うねん。」
「癌とかなら別の話やろ?来夢が癌になったら全財産使ってでも治療出来る医者を探したるぞ。」
「意味が違う!」
「なら来夢は俺を探し回るんか?」
「そりゃ、そやろ?」
そこで悠真が嫌な顔をする。
「俺の時は探さんでええぞ。そんな無駄な事するよりも来夢はさっさと諦めて新しい男を探せや。」
俯いて情けない顔をする悠真が嫌い。
何故、毎回のように自信を失くすと別の男を探せになるのかと思うと苛立ってまう。
「なんで探したらあかんのよ?」
不機嫌を丸出しにして悠真を責める口調になる。
「帰って来うへん奴に期待して待ってたら眠れなくなるからな。」
悠真はただそない言うて寂しく笑った。
悠真が考えるのは常に龍平おじさんの事だ。
だから悠真の感覚が人とは違う。
薄っぺらな約束で私を縛り付けるよりも悠真が絶望的だとわかった段階でさっさと気持ちを切り替えろと平気な顔で私に言う。
それが辛くて胸が痛い。
それを乗り越えられなければお父さんが認めてくれるとは思えない。