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振り向けば…
第56章 仕事やから…
こんな些細な事で私と悠真はお互いに不機嫌になりお互いを睨み合う。
20年染み付いたお互いの悪い癖。
唯一、本音を見せ合う仲だから自分の気持ちをぶつけ合っては離れようとしてまう。
そして、ほとぼりが冷めると元の鞘。
今はそれで良くとも、これが結婚をして離婚をした後なら洒落にならない関係だ。
「だから…、お互いの気持ちが大切なんだよ。」
泣きたい自分を堪えて悠真を説得する。
「けど…、俺にはこれ以上の事はわからん…。」
悠真が泣きそうな私の頬にキスをする。
「だから…、このままオッチャンが認めてくれへんなら別れた方がええんか?」
情けない顔で私の顔を覗き込む。
「その考え方だけは絶対にすんな。」
悠真に言い聞かせるつもりで自分にも言い聞かせる。
つまらない障害に出くわす度に悠真と別れてたらキリがない。
お父さんが反対する理由すらわからん状況で悠真と不安がってばかりも居られない。
「次はちゃんと2人でお父さんと話をしよう。」
私から悠真の頬にキスをする。
お父さんはあくまでも私と悠真の結婚を認めないと言うただけで別れろとは言うてない。
別れさせるつもりなら私に悠真のところに行けとは言わないはず。
なのに不安が収まらない。
自分の人生で生まれて初めてお父さんにダメだと言われたから…。
全てが私優先だったお父さん…。
激甘で私にはなんでもしてくれたお父さん…。
そのお父さんの為にお父さんが自慢出来る娘を目指して来た私が結婚相手が悠真だと言った瞬間に否定された事がショックだ。
悠真だって同じような気持ちだと思う。
父親代わりだったお父さん…。
お父さんの手術の時に最後までお父さんを信じてたのは薄情娘の私じゃなく悠真の方だった。