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振り向けば…
第58章 それは反則だから…
この顔だと今日も悠真に勝たせる気はないと思う。
「お父さん…。真面目にやってよ。」
そろそろお父さんを叱るべきだと判断する。
「真面目にやっとるから悠真が勝たれへんねやろ?手加減の八百長をしろ言うんか?」
「そうじゃない!腕相撲で娘の結婚を決めるとかふざけ過ぎてるよ。」
「ふざけとらん。来夢の結婚相手に俺より弱い男だけは認めへんて昔っから決めてた事や。」
「お父さん!」
「外野はごちゃごちゃ言うな。悠真…、かかって来いや。」
リビングの小さなガラステーブルにお父さんが腕を出して悠真を挑発する。
悠真は黙ったままお父さんに腕を出す。
結果は言わずとも瞬殺。
「悠真は根性がないのー。」
冷やかすようにお父さんが悠真に言う。
「それでも…、俺は来夢と居たいから…。」
「居たいから一緒に居るだけじゃ、家族を守る事なんか出来へんねん。悠真、お前は男やろ?力ずくでも乗り越えなあかん状況でお前は自分には無理やからと逃げ出すつもりなんか?」
チクチクとお父さんが嫌味を悠真にぶつける。
お父さんに答える事が出来ない悠真が俯いた。
このままだとお父さんが本気で悠真に土下座をさせそうな気がする。
「俺は…、確かに力はないです。来夢にしてやれる事だって一緒に居てやるだけしか出来ないです。俺はオッチャンに勝てる男じゃない。だけど…。」
悠真が切羽詰まった声を出す。
そんな悠真を見たくないと思う。
壁に当たると逃げ出そうとする悠真。
それは私も同じだ。
書類の山から逃げ出したい。
お父さんという壁から逃げ出したい。
悠真と2人なら逃げ出せるとか甘い考えをしてる自分が嫌いだ。