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振り向けば…
第59章 サイズがな…



それは龍平おじさんの話…。

藤井さんが何とも言えない顔をする。

お父さんも苦味を潰したような顔をする。

私と悠真だけが知らなかった龍平おじさんの話を淡々とおばちゃんが悠真に向けて語り出す。


「大ちゃんの親友やったし、死んだ人の事を悪くは言いたくないよ。あの頃は私もぼーそーしてて馬鹿やったし…。龍平だけが全てやとか思うてた。」


ビールを飲みながらおばちゃんが悠真に向けて懐かしそうな顔をする。


「悠真に龍平の記憶がないのは当たり前なんよ。あの人は酒と女にすぐ溺れるダメな人やってん。」


見た目だけはやたらとカッコ良かった龍平おじさん。

うちのお父さんに憧れてお父さんの真似ばかりをしてたおじさんの話をおばちゃんから聞かされる。

悠真を妊娠した時もおばちゃんの実家に頭を下げに行く勇気がなかった人。

悠真を出産した時もお酒に溺れて家で寝てるだけだった人。

悠真の名前すら


『学校に行ってない俺にそんな難しい事が出来る訳ないやんけ。』


と言うてうちのお父さん任せにした人。


「それでも時々は悠真をバイクに乗せて父親らしい事をしようとする人やったわ。」


それは、うちのお父さんに比べて僅かな時間しかなかったとおばちゃんが言う。

龍平おじさんが死んだ理由もお酒が残った状態で現場に行き、足場から落ちた事が原因だと私と悠真は初めて知らされた。


「そんな人の為に悠真が寝れなくなるとか私には全く理解が出来んかったわ。」


おばちゃんが情けないものを見るように悠真を見た。


「だからな。龍平の事なんかもう思い出されへんで構へんからアンタは来夢ちゃんの事だけ考えや。」


それがおばちゃんからの悠真へのお説教だった。


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