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振り向けば…
第60章 振り向けば…



何故、悠真と結婚するか?

答えは決まってる。


「逃げらへんからな。」


そない言うてクスクス笑う私を悠真が不思議そうに眺める。

抽象的な言葉は理解が出来ないから。

だけど私にとって悠真とは常にそういう存在である。

強い女になりたかった。

お父さんのように負けず嫌いの女に…。

そのライバル的存在が悠真だった。

悠真は常に私の1歩先を行く人だった。

だから私は悠真よりも先へと焦って生きて来た。

強気で進んで来たけれど、それは簡単な道じゃなかったとは思う。

今だって、仕事をする上で女が建築現場で監督だと言えば嫌な顔をされる事が多い。

逃げたくなる様な事柄は何度もあった。

大好きな家族からすら逃げ出したい時があった。

立ち止まり振り返る。

振り向けば…。

何故か必ず奴が居る…。

笑って私の頭を撫でてくれる時もあった。

怒って私を突き放す時もあった。

その人に負けたくないと思った。

いつの間にか、その人に相応しい女になりたいと願うようになってた。

何よりも、その人が居る限り逃げたくない私が居て逃げられへんと感じてた。


「それが悠真だから…。」


私はそう断言する。

悠真が照れたように笑う。


「なら…、悠真はなんで私と結婚する気になった?」


今度は私が聞き返す。


「それは…。」

「探したいという話と違う。そもそも、なんで私を探したいと思うねん?」


私の質問に悠真が真面目に考える。


「来夢だけが俺を許してくれると思うからな。」


夕日は完全に沈み、暗くなって何も見えなくなった海岸を眺めながら悠真がゆっくりと答える。


「許す?」


何をだろう?

私は質問を悠真に繰り返す。


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