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振り向けば…
第7章 いつか連れてったる…
悠真は応援団に忙しい…。
暇だ…。
1日1日が長く感じる。
まるで48時間あるような気がする。
私だけ?
世界に取り残された気分…。
膝を抱えてベッドに踞る。
誰か…、助けて…。
何故助けを求めてるのかさえわからない。
そうやってるうちに眠ってまうから少しだけ時間が進んでくれる。
秋になり応援団に夢中の溝口先輩とは全く話をしなくなった。
部活にも先輩が来ない。
こんちゃん先輩が険しい顔をする。
「ぐっさん…、推薦入試に失敗したかもな。」
その答えはすぐにわかる。
体育祭の当日…。
「一般入試で頑張るしかねぇよ。」
私のお弁当を不機嫌な顔で食べる溝口先輩が居た。
踊ってたら大学になんか入れないよ。
そんな事すら言うてあげられなかった恋人…。
今年も女子からキャーキャーと言われる踊りを見せた溝口先輩の背中に悲しくなる。
年末には私は食堂にすら行かなくなった。
その代わりにお父さんが帰って来る。
「長かったぁ…。」
リビングのソファーでタバコを咥えて背伸びをするお父さんの足元に行く。
「おかえり…。」
「ただいま…。」
もうお父さんはどこにも行かない。
最後まで私の傍に居てくれる。
それだけで満足だと思う。
小さな世界から出られなくともお父さんが居る世界が私の全てだった。
今年もお父さんとべったりと過ごすお正月。
「悠真は?」
「さぁ、知らん。」
「お前ら…、また喧嘩してんのか?」
別に喧嘩なんかしてない。
ただテニス部に入った1年生が毎日のように悠真のお弁当を作って来てるのを見ただけだ。