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振り向けば…
第8章 お前と同じ大学…
ああ、やっぱりか…。
悠真はいつもそうだ。
彼女が欲しいと言うけど彼女を作らない。
大学に行きたいと言うけど大学に行くのを躊躇う。
自分には父親が居ないからか?
聞きたくても聞いてはいけない言葉を飲み込んだ。
「そろそろ、応援団の準備やな。」
そない言う悠真とは別れて更衣室になってる教室に行く。
髪をポニーテールにしてレースで出来た紫の大きなリボンを付ける。
「なんか古臭い格好やな。」
グランドに居たお父さんに衣装を見せるとお父さんが不思議そうな顔をする。
「テーマが『80年代』やもん。」
「悠真は?」
「あの辺に…。」
応援団が集まっている辺りを指差して固まった。
皆んなが薄紫色の衣装を着てる中にくっきりとした露骨な紫の男が居る。
背中には『喧嘩上等』の刺繍が入った特攻服…。
長い鉢巻きを靡かせる悠真。
「あれ…、龍平の戦闘服やんけ。」
お父さんがゲラゲラと笑う。
お腹に薄い紫のサラシを巻いて仁王立ちをする悠真が誰よりも大きな存在に見える。
ザワザワと学校中が騒ぎ出す。
「ねえ、悠真先輩の服…、本物!?」
今時、特攻服なんて珍しい。
あれが龍平おじさんの形見…。
悠真のお母さんが泣きそうな顔をする。
お父さんの会社の従業員の人達も
「龍平先輩や。」
と騒ぎ出す。
「悠真に言うたれ、木刀持ってたら完璧やって…。」
「アホな事言わんといて!」
こんな時はお父さん達がぼーそーぞくというバンドをやっていた事実は恥ずかしいと思う。
お父さん達から離れて悠真に駆け寄った。
既に青組の応援合戦が始まってる。