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振り向けば…
第8章 お前と同じ大学…



「似合うか?」


悠真がニヤリと笑う。


「木刀が足らんらしい。」


お父さん達を指差して言うてやる。


「それは勘弁してくれよ。」


悠真も苦笑いをする。

だってこれは『80年代』を真似した姿。

現代っ子の私と悠真は普通の高校生。


「龍平おじさんの服か?」

「高校に行かなかったオトンに見せてやりたかったんや。」


勉強は辛いけど高校だって楽しい場所だと悠真が見せたかった気持ちが私にだけはわかる。


「けど…、オカン。よくこんな格好したオトンと結婚する気になったよな?俺なら恥ずかしくて絶対にお断りやわ。」

「それを言うならうちのお母さんもだよ…。」


スキンヘッドに作業服にサングラスのお父さん…。

しかも現役で娘の体育祭に現れる。

悠真がゲラゲラと笑う。


「オッチャン、長生きするな。」

「あれは死なへんよ。」


去年の今頃は怖くて言えなかった会話を今年は笑って悠真と話せる。

そして私は龍平おじさんと踊る。

カッコいいと思った。

だから悠真のお母さんは龍平おじさんと結婚したのだと私の中で納得する。

悠真がバク転をすると長い裾の特攻服が広がり観客からどよめきが聞こえて来る。

カッコいいよ。

悠真には絶対に言わんけど…。

曲が止まると割れんばかりの拍手が起きる。

高校生最後の思い出に満足する私が居た。


「悠真君…、すげーな。」


こんちゃん先輩達が私に駆け寄って来る。


「あの特攻服は本物?」


悠真の衣装だけは背中に刺繍が入ってる。


「悠真のお父さんの形見なんです。」

「すげーっ!」


日下先輩もこんちゃん先輩も目を丸くする。

明日香先輩が


「悠真!その服見せて!」


と叫んで悠真を呼ぶ。


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