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閃光
第1章 閃光
「……ここに、しようよ」


これだけの花火が上がるのであれば、見物客がいてもおかしくはない
しかしその人影は全く見当たらず、別世界の空間へと迷い込んでしまったかの様に感じる

凛の呟きに、真翔は同意する



自殺方法は簡単だ
内側から目張りをし、予め用意した練炭に火を付ける
これは、携帯で連絡を取り合った時に二人で最速決めた方法だった



「……キス、してもいいよ」

ガムテープで隙間を塞いでいた真翔は、凛の突然の言葉に手が止まる

「した事なくて死ぬの、嫌じゃない?」
「…何を言ってるんだ」

此方を見る凛に、真翔は乾いた笑顔ではぐらかす
しかし凛は引き下がらなかった

「……僕、男だけど…女の子に間違えられる事しょっちゅうあるし」
「……」
「お礼の代わり」

目張りを終えた真翔が、ゆっくり振り返る
氷柱の様に冷たく尖った、凛の視線……
黒目が左右に数回動いた真翔は、口角を上げ苦笑いをしてみせる

「……言っておくが、キスの経験くらいはあるぞ」
「………」

そう言ったものの、真翔の言葉が虚しく響く程、凛の表情は崩れない

今時の若い奴は、キスなど挨拶程度の軽い感覚でしかないのか……
凛が特別なのかそういう世代なのか……真翔はそのギャップにショックを受けた


表情を崩さない凛とは対照的に、真翔の頬がみるみる赤みを帯びる


確かに良く見てみれば、凛は女の様に綺麗な顔立ちをしている
伸びた前髪から覗く瞳は大きな二重で、存在感のある睫毛が長く、天を向いてカールしている
青白く光る肌に、浮き立つ様な赤い唇
ぷっくりとして、何とも柔らかそうだ……


ハッと我に返った真翔は、数回瞬きをし凛から目線を外す
そして悟られぬよう、直ぐに凛に背を向ける

「……」

無意味に窓ガラスに手を触れた、真翔の動きが止まる

「…………しても、いいのか……?」





凛の頬に触れる
クーラーが効きすぎたせいか、ひんやりと冷たい
それは、何処か冷めた瞳の凛に良く似合っている
色素が抜けキラキラとした髪は、これまた漂白剤に漬け込まれたかの様に白い柔肌に似合っている
少しピクリと反応を示した凛の瞳が、ガラス玉の様に冷たく光る
血で滲んだ様に赤い唇に親指を当てると、ゆっくり紅を引くようになぞる
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