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姦譎の華
第15章 15
 しかし凝固を解いた島尾は、左右の手を緩め、肉茎をスッと引き抜いた。ブラウスの中は依然ヌメってはいたが、本弾が発砲されたほどの泥濘は感じられない。

「……まだ仕事中だしな。おあずけだ」

 未練を断ち切るようにさっとズボンを上げ、振り返りもせず倉庫を出ていく。

(んくっ……)

 突然、遺棄されたも同然だった。

 喉を搾った呻きは、少なからずの自負あるバストを、かりそめの慰みとされた口惜しさによるものではなかった。パンプスを踏んで不安定に崩れた体勢を立て直すと、蒸せる牝の奥が小さく撥ねた。解放されてなお、灼熱の胴身の肉感は、重さというより密度が増したかようなふくらみにありありと残されていた。

 柱に両手をくくられた格好は、まさしく虜囚そのものだ。

 この自分に比べれば、容姿だけではなく何もかもが平均以下の、ホスト狂いに走って横領までもしでかした女子社員。彼女を隠れ蓑にしたことが、ここまでの科刑を受けるに値する罪だったのだろうか。

 奥行きを失った視界の中で、慚愧は悔悟と結びつき、思い返すにつけての沮喪に、多英は時間の感覚をも排斥し、誘われるがままに眠りに落ちようとしていた。

 再び、解錠音とともに灯りが点く。

 入ってきたのはもちろん救いの主ではなく、島尾でもなかった。ただし来るだろうなとは思っていた。非常階段には誰もいないからこそ入って来れたのだろうに、稲田はドアを閉める間際まで外の様子を窺っている。

「あ、ああ……、多英……さま」

 こんな汚くも肌寒い場所へ長時間放置していることを詫びようとでもいうのか、振り返りざまに両手を床についた。
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