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姦譎の華
第15章 15
 パンプスを脱いだばかりの足裏へ顔面を押し付けられるだけでもたまらなかったのに、人間である限りは蒸れないわけはない指間に、味覚器が這わされているのである。稲田は汗腺ひとつたりとも逃さじという丁寧さで、残りの指も平等にしゃぶり、唾液が口腔の許容量を超えてくる都度、喉仏を動かして磨ぎ汁を嚥下している。趾が成す凹凸をあまねく舐め取られるうち、目頭がジンと爛れてきて、慌てて鼻を啜った。いったい何の涙なのか、恥辱を司る脳野の解釈が追いつかない。

 ようやく脚を下ろされても、涙腺の警戒を解くわけにはいかなかった。人間の脚が二本であることを、呪う日がくるとは思わなかった。

「はあっ……、た、多英さま……、私も……、どうか、わたくしも」

 しかし稲田は、パンプスを外したもう一方へは口を押しつけてはこなかった。座位を蹲踞に変え、ジッパーが開かれる。真上に突き出る肉槌がネクタイとの間に糸を引いた。

(ひっ……、や……)

 片手ずつ足を取られ、揃えられた。土踏まずによって形作られた流線型の狭間へ、肉槌が挿し込まれてくる。踵が根元の軟らかい袋を踏みつけるが、稲田は苦痛に悶えることなく、むしろ恍惚とした表情を浮かべて、甲の間から出した槌先から透明の雫を噴き出させていた。

 振り払う力も、急所を凌轢する力も、残っていないわけではない。

 だが……私も。……わたくし「も」。

 卑猥極まりない足技を強いられていながら、多英の膝頭は合わさってはいなかった。股関節にも角度が生じ、長い脚が細い菱形を描いている。稲田が足裏どうしを合わせくると、更に膝は離れた。十本の指で肉槌をつかまされ、指先の一点々々に感じる牡の覇気が脚の内側を伝わって対称角の牝奥へと届けられる。

「あう……多英さまの足コキ、気持ちいい、です。ゆ、夢みたいだっ……」

 トロけた声とともに、ブチュッと粘液が撥ねた。
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